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おまえどこ中?

最終学歴 オールフィクション

琥珀

短編

久しぶりに開けたスニッカーズは思い出の中のそれと余りにも違っていて、俺をむしゃくしゃさせた。

独特なしつこさがあるヌタャっとしたキャラメル、それをコーティングしたチョコレート。それとパッケージの間に隙間がある。気づかなければよかった。気づかなかったことにしたい。

むしゃくしゃした時、虚しい時、悲しい時、疲れた時、俺はスニッカーズをかじった。何個も何個もかじった。パッケージがパツパツにしていて取り出しにくいのを無理やりひん剥いてかじるのが、俺は好きだった。

唐突だが、俺にはずっとやってみたいことがある。謂わば夢だ。

俺はいつか小さくなって、パッケージとスニッカーズの隙間に入りたい。

スニッカーズに向かって体を伏せて寝転び、スニッカーズを力いっぱい抱きしめたい。

今まで八つ当たり的に食べてきたお前だけど、おれはお前がとても好きだ。いつかまた、お前のサイズが元に戻るかもしれない。ピッチピチのパッケージを着こなすお前を、俺は抱きしめてみたい。俺がパッケージとお前の隙間に入ることができないくらいに、お前は豊満になれ。

お前は豊満な身体になり、身につけているパッケージとぴったりとくっついた時、俺の居場所はなくなってしまう。その時はお前のチョコレートの皮膚を俺の体温で溶かし、中のキャラメルに向かって沈んで行こう。俺の身体に抵抗はない。

ヌタャっとしたキャラメルの中。俺はまるで、琥珀の中に眠る1匹の虫だ。俺は目を瞑り、呼吸もなく、意思もない。ただ長い時を眠って過ごす。キャラメルの琥珀の中を永遠に生きる、1匹の虫。