読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

おまえどこ中?

最終学歴 オールフィクション

超絶ミラクルウルトラグレート大丈夫

誕生日覚えてなくても冬休み中だし忘れられ慣れてるから大丈夫!名前の漢字も間違えたって大丈夫間違えやすいもんね!みんなで撮った写真送ってくれなくても大丈夫ツイッターに載せてるもんね!二人で遊んだこと秘密にしてって言われたら守るよ大丈夫だってその方がいいんだもんね!無理に好きになろうとしなくても大丈夫そういうのは良くないもんね!一番じゃなくても全然大丈夫この前夢の中で好きっていってくれたよ!目合わせてくれなくても大丈夫きっと照れてるんだよね!仲のいいグループで遊ぶ時わたしだけ誘い忘れても大丈夫普段外でないし!私以外のみんなで遊んでたの後日SNS経由で知っても大丈夫そういうメンツだったんだもんね!約束すっぽかされても大丈夫忙しいって言ってたもんね!電話出てくれなくても大丈夫まだ着信拒否されてないし!他の女の子のSNSにはいいねするのにわたしのにはいいねしてくれなくても大丈夫ブロックされてないし!お前IQ2って言われても大丈夫そういうコミュニケーションだもんね!顔見たくないって言われても大丈夫、大丈夫!

いっしょうだいすき

自分の中のもの全て、目新しさがなくてつまらない。いつも聴く音楽、思考パターン、好きな服のシルエット、いつも着るブランド、好きなアニメ、好きな映画、好きな小説、好きな漫画。世界は新しいもので溢れているのに、自分は全然新しくなくて、ここから一歩も進んでない気がする。新しいのが正しいのかって言われたら正しくないかもしれないし正しいのかもしれないけど、ただはっきりつまらない。つまらないけど、新しいものを取り入れる勇気はまだない。一度気に入ったもので満足出来るだけしたい。気に入っているものが新鮮さを失っても、わたしはそれを気に入り続けたい。気に入ったその時は簡単に、これは絶対に一生好きだって思ってしまうのをやめたい。絶対も一生も、そんなもの、ありえません。

ごめんね

短編

 

「ごめんね」

あ、

「僕、佐久間さんのこと女として一度も見たことない」

  

 

数えたって虚しいだけ。数えないけど、何回目かな。勇気を出した告白、帰り道。たばこの煙と人間をかき分けて乗った電車の、窓の奥はキラキラ、街灯の街。人間の街。なんでもある新宿。

JR山手線。新宿を出ると窓の奥は暗くなった。それとほぼ同時に映り込む自分の情けない、情けない、情けない顔。なんにもない私。泣けてもこない。ぽかんとして、ああこの感じ。慣れたなって、思います。慣れっていうのはすごいです。今日はああ言われたけれど、好きって言い続ければいつか、いつか、いつかイケる、伝わる、彼女になれる。彼女になれるよ。そんな気さえして、

「でもやっぱり好きです!」

「いや、だから、、、ごめん…」

 電話でもだめかあ

 

 

「おはようございます!」

出勤して席に着くけど誰からも返事は

「最近の子は挨拶の声も小さいのよね」

 

自分なりの精一杯、大声挨拶。なにかにつけて年下の女性社員に文句をつけるお局。最初はきつかったけど、就職してもう2年と半分ちょっと、もうすぐ3年。慣れてきた。慣れっていうのはすごいです。気にならない。気にしなければいないと同じ、ないものと同じ。一緒に入社した同期は、積み上げた努力や結果を買われて、どんどん上へ行ってしまった。たまに社内ですれ違うと、連れていた後輩に先にいってろという旨の顎の動きを見せ、わたしにむかってバツの悪そうな、照れくさそうな会釈をしてみせる。別に後輩を先に行かせる必要はないのでは。同期なんだから、きつい研修耐えた仲だったんだから、気を遣わなくていいのに。

「おつかれさまです。」

「おつかれ〜」

早く立ち去らなきゃ、

「最近どう?」

 

 

仕事が終わって、限界。もう無理。でもわたしだけが限界じゃない、しっかりしろ。目を覚ませ。みんな一生懸命生きてるよ。

駅で見かける、道端に座り込んで大丈夫って目を乞う真似は嫌だから喫茶店へ逃げた。メロンソーダひとつ、口が勝手に動く。たいていのメロンソーダは嘘の固まり。そんなの小学生になる前から知ってる。それでも、わたしは騙されながら飲む。嘘は美味しいし、もしかしたら本物より美味しいのではないか、と思う。嘘でもいいから好きって言って。誰か。そのメロン味の正体は、化学の進化だと知りながらおいしいなと飲むように、わたしに好きって、ひとこと。メロンソーダの嘘に溺れさせて、誰か。

「結婚してください!」

「?」

LINEもだめかあ

 

 

喫茶店を出て新宿東口に向かう、アイドルソングが大きな電光掲示板から流れてくる、真っ暗な夜の空には眩しい画面。明るすぎるから目を細める、苦しい、画面が眩しいから苦しいのか、一生懸命なアイドルが眩しすぎて苦しいのか、わからない。アイドルだって人間だ、わたしと同じ個数の臓器があるはず、義務教育を受けたはず、悩んだり苦しんだり絶対してるのになんであんなに眩しい笑顔で一生懸命なの。わたしとあの子達は何が違うの。ライブ映像が、話題の売れ始めたバンドに変わった。やはり眩しい。

 

 

「おねえさん仕事帰りっすか?かわいっすね!一目惚れしちゃいました!お茶一杯どうですかね?」

あ、人だ

「え?ねえねえ、え?シカト?シカトときたか〜〜笑 まー、そんだけ可愛かったらいろんな人に声かけられるっしょ?実際おねえさん可愛いし!かわいい!いやいや、これホントだから笑 嘘だと思ってるっしょ!まぢで!おれお姉さんのこと好きだわ笑 いやいや、これも無視?ホンマ?え?無の視ですか〜〜〜笑?必殺オールシカト??それやっちゃいますぅ?え〜〜〜まじか!きついな〜〜!お茶くら「ホテル行きませんか。」え?」

「ホテル行きましょう。」

 

声をかけて来た男の顔も見てないけど、口から出た。もう寒すぎるから、誰でもいいから助けて欲しかった。寒さから。他人の明るさから。冬は痛い、厳しい、風が冷たい。心が隙間だらけだから本当に寒いの。空っぽだから吹き溜まりになっちゃうの。感情のやり場がないの。カップルが手を繋いでるのを見るだけで真ん中を突っ切ってやりたくなるの。最低なの。もう何も見たくない。考えたくない。あったかいところへ連れてって。何かに集中させて。

「おねえさん大胆だね!笑」

ワラ、じゃねえんだよ。

 

 

初めて昨日と同じ服で出社した。お局になんか言われたけど、なんにも覚えていない。どうでもよかった。いつもと同じような作業、定時上がりするお局のあと、2時間残業、退社。限界。

 

「お疲れ様です!今日も大好きです!」

返事ないなあ

 

 

顔も覚えてないけれど、どういう風にわたしに触れていたかも覚えてないけれど、昨日の人。肌が触れ合う感覚は確かにあって、確かに一緒に眠って、確かにあたたかった。温度があった。冬が寒いのは、人間があたたかい生き物だって、きちんと確認させてくれるため。だからわたし、間違えてない。確認しただけだから。

 

 

本当は、誰か、なんて、そんなのいや。本当に、誰でもいいなんて、そんなのいいわけない。だけど、どうやったら好きになったひとがわたしを好きになってくれるのか、本当に本当にわからない。あまりにも人から相手にされなくて、わたしは全身凍ってしまうほど、冷え切った。虚しい。心の、真ん中のもっともっと真ん中に、小さな霜が降りて、それが徐々に広がっていく。髪の毛からつま先まで、指もまつげも心臓も感情も、冷えてしまった気がする。表面も繕えない。ひとりきりでもわたしはあったかいですから大丈夫、という様な振る舞いもできないくらい。

冷えに耐えて、耐えた先に何かあったらいいけど。暖かい風は吹きますか。君はまだ若いから、そんな気休めが自分でもまだ受け入れられる、そんな程度だったらよかったのに。

お掛けになった番号は

「もしもし佐久間です!お疲れ様です!また掛けます!好きです!」

留守電にもならないな。

 

 

『お疲れ様〜、佐久間さん今日も残業ですか?缶ですけど。コーヒーどうぞ!そっちも大変そうですね!一息つきましょうよ』

彼が初めてくれた言葉を思い出して、知らない男の腕の中にいる。知らない寝息。知らない指の使い方、知らない抱きしめ方。今までに交際を断られた相手のことも、知らない誰かに抱かれる度、ひとり、またひとりって、思い出すのかもしれない。その度に凍った体と心が音も立てず静かに割れていく。そんなイメージが湧くけれど、凍るはずのない肉体や実態のない心は割れやしない。そんなにわかりやすく人間はできていない。他人にも、これが見えるようになれば、少しは、なにかあるのだろうか。見えないから、知らん顔できるのか。 

 

↑←

スマホの画面を2度撫でて、たった二文字のメールを消した。

 

 

知らない男に抱かれている、束の間の、嘘っぱちの、その場限りの、「かわいい」と「すき」に縋ってわたしはこのまま本物の「かわいい」と「すき」を知らずに、女を枯らすのかもしれない。

ごめんね、わたし。

 

 

 

また知らない男の腕の中で彼にメールを打った。

 

 「セフレじゃだめですか?」

 

それなりの

甲州街道大きい横断歩道の真ん中に取り残されて左右は知らないくるま、世界には、私たちだけだね