やわらかなおまえ
「子供のころは今好きなものを一生好きなんだろうなって疑いもしなかったよ」
「わたしは子供のころに読んだ少女漫画のときめくセリフを今でも求めてるよ」
「オタクだね」
「違う。夢見がちなだけ」
「いやオタク」
「それで子供のころに好きだったものは何?」
「神様」
「神様?」
「神様が大好きだった」
スーパーフィルム
さよならは言わない
愛の花束
恋の矢
願えば叶う
いちずな願い
ニュームーン
再開の時
あなたのもとへ
心は軽はずみ
真夜中の乙女
ベルリンの騎士
朝が来る前に
冬、夏
寒さというものは忘れていたいろいろを思い出させてくれる。人間があたたかい生き物なんだってこと、東京の空も澄んでくれば綺麗なこと。マフラーを巻けば自分の温度で暖かいこと。
あなたはいつでも暖かくて眩しいけれど、内側が凍えたことはないのかしら。
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July 2016
ほとんど雨の降らなかった梅雨が明けて、気温は上昇。カラッとしていればいくらかいいものを、空気は纏わりつくような水分を抱いて鬱陶しい。晴れているのに霧が出ている、みたいななんとも言えない中途半端な天気である。しっかりしてくれ。
大学最後の夏休み前、友人は思いを寄せている男に告白したらしい。結果は玉砕なんて清々しいものではなく、ここのところの天気ように曖昧なものであった。
「今年が終わるまでに彼氏ができなくて、セックスできなかったらわたし、介護のさ、アレ、性処理?申し込もうかなって思ってるんだけど。」
自分の中にない発言をされると時空が歪んだ気持ちになる。
「他人の物差しで生きるとモヤモヤして苦しいよね。」
なんて言っていいのかわからず、答えにならない曖昧な返事をした。友人は続けて何かを言ったが、わたしの耳には何も入ってこなかった。