おまえどこ中?

最終学歴 オールフィクション

やわらかなおまえ

「子供のころは今好きなものを一生好きなんだろうなって疑いもしなかったよ」

「わたしは子供のころに読んだ少女漫画のときめくセリフを今でも求めてるよ」

「オタクだね」

「違う。夢見がちなだけ」

「いやオタク」

「それで子供のころに好きだったものは何?」

「神様」

「神様?」

「神様が大好きだった」

子供の頃、親や祖父母に手を繋がれるのが一番嫌いだった。

家族から責め立てられて、発言しても無駄だけど感情は込み上げてきて堪えきれずに涙を流すと、君のことは愛していますよわかってねみたいに突然頭撫でたり抱きしめてきたりするの本当に気持ち悪い。

July 2016

ほとんど雨の降らなかった梅雨が明けて、気温は上昇。カラッとしていればいくらかいいものを、空気は纏わりつくような水分を抱いて鬱陶しい。晴れているのに霧が出ている、みたいななんとも言えない中途半端な天気である。しっかりしてくれ。

大学最後の夏休み前、友人は思いを寄せている男に告白したらしい。結果は玉砕なんて清々しいものではなく、ここのところの天気ように曖昧なものであった。

「今年が終わるまでに彼氏ができなくて、セックスできなかったらわたし、介護のさ、アレ、性処理?申し込もうかなって思ってるんだけど。」

自分の中にない発言をされると時空が歪んだ気持ちになる。

「他人の物差しで生きるとモヤモヤして苦しいよね。」

 なんて言っていいのかわからず、答えにならない曖昧な返事をした。友人は続けて何かを言ったが、わたしの耳には何も入ってこなかった。