おまえどこ中?

最終学歴 オールフィクション

山の斜面で恋をした

どこに行ってたの

女の子が多いところ

キャバクラ?

まあ、でもお前よりいい女がいないことを確認してきただけだよ。付き合いで行っただけだし。

ふーん

不満げだねえ

嘘は悪いことじゃなくて、寂しいことなんだよ。

俺を寂しいやつだっていいたいの?

人を信用しないことはいけないことだけど、だいたいはそれで上手くいく。

何がいいたいの

この世で一番美味しいごはんは一人じゃ食べられないって言うから、どうしても一人で食べたくない。

つまりは?

昨日の夜も一人で食べたよ。

だろうね

あなたに会えるのはもう夢の中だけ。

うん

みーんな夢の中

一夜限りの本当の愛

「いい夜だよ。少し歩こう」

「怒った顔も可愛いよ」

「美白の秘訣は不登校になることだよ」

「彼氏作らないんじゃなくてできないんです」

「Tシャツジーパンで様になる男女」

「まだあったかい缶コーヒー飲みたいのにな」

「フィギュアのスカートの中を覗くな!」

 

おいしい

目が覚めた。

時計を見ると朝の5時だった。カーテンの向こうはすこし明るかった。めちゃめちゃ眠かったのでもう一度寝た。

また目が覚めた。体が異常に怠い。ふと左腕の切り傷が目に入った。記憶にない。そもそも眠りにつくまでの記憶が全くない。嫌な予感がしたので、アイフォンを手にとってツイッターやらラインやらを隅から隅まで見た。絶望した。ツイッターにはこの家はアウシュビッツと投稿されていた。交際相手に意味不明な返事をしていた。一瞬で自殺したくなった。

居間に行った。弟が居間のテレビでゲームをしていて、朝の挨拶をした。弟の返事がいつもと雰囲気が違うので、昨日なんかあったかと聞いたところ、すごかったよと言われた。根掘り葉掘り聞いたら、点と点ながら思い出してきた。以下、弟の証言と記憶を辿った平成29年7月23日から24日についての日記です。

 

昼間から夜の20時くらいまで家族四人で母親の希望でららぽーとへ行っていた。とても疲れていたので、家へ着いたらすぐに寝ようと思っていました。家について居間で、すこしうたた寝をしたら元気になったので、買ってきた新生姜をひたすら刻んでタッパーいっぱいの生姜酢を作りました。新生姜は干していないので柔らかくて切りやすいな、とか考えながら作業をしました。生姜を縦に薄切りにしてから細切りにするのは、無心になれて本当に楽しいことです。

無心になっているつもりでも、根本的に無心にはなってはいない。将来の不安や奨学金をどう返済するか、この前海に行った時に元気な人間に囲まれて孤独を感じたこと、自分がいかに甘えているか、交際相手の今までの発言を反芻したり、数日前に初めて母親と交際相手と三人で昼食を食べた時のことを思い出したりして、死にたいと心から思いながら生姜を刻みました。生姜は繊維に沿って切るとすんなり切れました。楽しかったです。

生姜を酢に浸して冷蔵庫に入れ、寝ようと思った。本当に気が滅入っていて自力じゃとても眠れやしないなとおもったので、精神安定剤睡眠導入剤を1錠ずつ飲んで自分の部屋へ行った。様々なことに絶望しきっていたので、山田花子を読んで明日から頑張ろうと思って、開いていたのは山本直樹『フラグメンツ Ⅳ』でした。睡眠導入剤が効いてきて夢見心地で山本直樹を読み続けていた。

わたしはこの感覚が楽しくて仕方がなくやめられません。

バカで欲張りなので、もっとその感覚が味わいたく、あわよくばたくさん飲んで死のうと居間に行き何錠飲んだかは忘れたがしこたま飲み、自室へ戻りました。

もうだいぶふんわり気分なのでツイッターを開いても何にも読めず、でも楽しいので永遠に見てしまう。

何をおもったか酒が飲みたくなり、キッチンのシンクでジントニックを作りました。何故か二杯作って飲み比べしたくなったので、一杯には凍ったマンゴーやブラックベリーを氷代わりに入れて、一杯には凍ったゼリーを丸々一個浮かべました。果物は冷たくておいしく、ゼリーはまるくてかわいいなあと心から思いました。かき混ぜるとキラキラと光を反射するので楽しくて気がすむまでずっと混ぜました。本当に楽しかったです。

途中弟が居間に来て何してるの?と訪ねて来たらしいが呂律の回っていない返事をされたらしく、ジントニックという言葉だけ聞こえたから早く寝なと言って部屋に戻ったらしい。日付が変わるか変わらないかくらいの話と朝聞きました。

その後京都へ行く新幹線はどれをとっただとか、映画ウィッチを観たよなどと交際相手からラインが入っていたのだが、この前一緒に観ようって言ってただろうが嘘つきが!!!と内心キレて先に観るのずるくない?と返事を送りたかったけど、もう完璧にキマってたので「いままいってるのてで(*☻-☻*)まあしたさささささささはははは」「あしたにしてくまかあ」「ウィッチ先またのずるくないけさですかま」と連投してました。記憶にない。

これまで便宜的に自分の部屋と言っていましたが、うちには部屋がなく、自分の寝るスペースへ行くには母親の横を歩いていかないといけないので、ラリっているのがバレました。

酒を飲んでいるのか聞かれて呂律が回らないなりに飲んだと答えたらしい。ずっとしゃっくりをしていたそうだ。しゃっくりは恐らく副作用と思われます、精神安定剤睡眠導入剤が合わなかったり飲み過ぎたりしたときはしゃっくりがとまりません。記憶にない。

何度もトイレに行ったり、なぜか家族一人一人を叩き起こしてはスケジュールを聞いたりしたそうです。記憶にない。

 

実家暮らしではわたしがふんわり気分を味わっていることはすぐバレるので、両親から心配というか本気で怒られます。わたしは記憶にないので怒られても繰り返します。

睡眠導入剤精神安定剤がないと普段生活ができないので、もう無くなりそうだからそれだけでも不安なのだが、特に母親はわたしがそういうものを飲んだりそういう病院へ行くことをひどく嫌がります。もう何も考えたくないという感情が募っては爆発して、ふんわり気分になりたくて仕方がなくなります。そして決行する。

稀に薬と酒を飲まなくても現実と夢の判別がつかなくなる時がありますが、そういう時は山本直樹『世界最後の日々』を思い出して、今日で世界がメツボーする!と思ってめちゃめちゃやってやりたい衝動に駆られてどうしようもなくなるが、実際にそうしないのは現実と夢が感覚の底ではきちんと理解しているからだと思う。そう思うとなんだか虚しく、本当に全部がどうでもいいなあという投げやりな気持ちになりますね。

殺すぞ

 

掛け時計の規則正しい心拍。

か弱く高い電子機器の唸り声。

外は闇。

iPhoneTwitterのふぁぼ通知で突然光る。


現在、午後23時48分。
 
眠れますか
眠れません
 
連日のテスト勉強の睡眠不足と大会前の居残り練習のせいで、今日は家を出る前から疲れた気分だった。授業が終わって部活をし、脇目も振らず家に帰った。おなかは空いていたけれど、お母さんが作ってくれていた好物の親子丼も食べず帰宅早々ベッドに潜り、目を瞑った。
 
ベッドに入ってからどのくらいの時間が経ったのかはわからない。まだ5分も経っていない様な気もするし、5時間くらい経った気もする。
天井をぼんやり眺める。吸い込まれそうな曖昧な白。少しだけ開いたピンク色のカーテンの隙間から伸びる街灯の、細く頼りなさげな光が、薄暗いこの部屋を二分割している。こっち側とあっち側。私がいる方といない方。何が違うだろうか。わたしは、存在している意味・価値があるのだろうか。
 
眠れないのはなぜだろう。いや、本当はわかっている。部活の同期に、うまくいかなかったプレーについてなじられたから。授業で先生に当てられた問題がわからなくて、クラスメイトの前で恥をかいたから。制服のスカートがほつれていて見窄らしかったから。
ううん、違う。
わたしはちゃんとわかってるのに、理解したくないフリをしている。
 
人間は日々他人が発するさまざまな情報の中で呼吸をし、膨大なそれを無意識の内に取捨選択をする。意識と無意識。受け取った情報は脳で処理され、感情に変わる。時折、正しく取捨選択が出来ずに感じた全てを脳で処理してしまう人間がいるのだそうだ。酷く疲れる。何もしなくても、外へ出ていたり人に会ったり風に吹かれるだけで憔悴。外界から得るものすべてに傷ついて、一人で勝手に落ち込む。
 
時計を見る
午後23時59分。
 
…57 58 59
 
午前0時。
明日が今日になり、今日が昨日へ移動した。
実体は今日しかないのに、どうして未来や過去という概念が存在するんだろう。わたしはいつでも今日を生きることで精一杯なのに。未来を見据えて生きるのは苦しい、過去を抱いて生きるのも苦しい。必死で生きてて恥ずかしい。
 
理解したくなかったこと
それは好きな人について
 
好きな人、そういう単語でさえ気恥ずかしくって簡単に口には出せない。
恋愛をすること、他人に特別な感情をいだくことに対して、小さい頃から秘めなくてはいけないという強迫的な思想を持っていた。いとこの麻衣ちゃんは幼稚園の頃からいつも、麻衣ちゃんママと恋バナをしていたそうで、わたしの母親はそれを大層羨ましがっていたそうだ。でもわたしはしたくなかった。
 
いつだったかテレビの中の芸能人をかっこいいと一言言っただけで、母親は何故だか喜び、あの子はあの芸能人が好きみたいよ!と家族はおろか近所中に言いふらした。テレビにその芸能人が映ればホラ!出てるよ!としつこく言ってきた。冷やかしだ、と思ってひどく傷つき、同時に怒りが湧いてきた。そんな経験からか、容姿の良い異性をかっこいい、好きと素直に言えなくなった。
 
ずっと秘め続けてしまうから、相手にも伝わらず、わたしの恋は実ったことがない。
学校中から付き合ってるとか、夫婦漫才なんて言われるほど仲が良い好きな人。
でも、今日失恋しました。
 
他の学校に彼女が居たみたいで、わたしと違う制服を着たその子と楽しそうに帰っているところを偶然見かけてしまった。その瞬間わたしは心臓が石になる感覚を味わった。
 
仲がいいことと、恋仲になることは違う。
こんな当たり前のことをすっかり忘れていた。
 
誰にも言っていない気持ちだから、一人でなんとかしなきゃ。苦しい、切ない、悲しい。でもやり場がない。こんなことならクラスメイトに「実は〜」と軽めに切り出し、「あいつのこと好きなんだよね(笑)」って言えばよかった。学校中から付き合ってるって噂されていたこと、それがわたしの首を絞めた。奴も奴で満更でもない様子で「ちげーよ(笑)」なんて毎回言うから。いや、奴は何も悪くない。違うって否定してるんだから。勝手に妄想して勝手に盛り上がっていたのはわたしの方だ。失恋なんて言ったけど、なにも失ってなんかない。失うどころか、ただの迷子だ。
 
時計を見る
 
午前1時02分
 
考えたらキリがないので眠りたい。もう1時間経った。明日は朝練だけど、失恋したし休みたい。学校も、休みたい。あー、こんなことなら本当に好きって言いふらせばよかったな、みんなに。
 
Twitterを見よう。奴の過去のツイートやふぁぼ欄に女の影があるのではないか。気がつかなかっただけで、本当はインターネット恋人さり気にひけらかし人間だったのかもしれない。そしたらキッパリ諦めがつく。
 
iPhoneを手に持った瞬間に通知画面が光った。
keitaさんが写真を送信しました。
 
iPhone手にした瞬間にLINEきた、ということは運命かも?!いや、こういうところがわたしの一番キモいところだ。現実を正しく判断する力がなさすぎる。
 
keita
お前のこの顔まじサイコー😭(笑)
寝ようと思って携帯見たらこれ一番最初に出て来てもうw
一生笑い止まんねwww
 
自分の変顔に励まされるなんて思ってもみなかったな。
 
既読  ウルセー👏😂
既読  草生やすなw
 
これでいいんだ。